花の中でも、ひときわ優雅で輝きをもつ胡蝶蘭。
しかし、その影には生産者のたゆまない努力と長い時間がかけられているのです。
優秀な胡蝶蘭を生産しているハウスをのぞかせていただくと、随所にそれを裏付けるものを見ることができます。
まずは左の写真を見てください。
なんだか分かりますか? シシトウみたいなのです。
実はこれ、「胡蝶蘭のタネ」です。
白いテープが見えますが、これはどの品種を掛け合わせたか記載している記録です。
中にはフサフサした黄色いものが詰まっています。
この目には細かい粉にしか見えない、一粒一粒がタネです。
花屋でさえ知る人が少ない、たいへん珍しい写真です。
不思議に思われるかもしれませんが、胡蝶蘭も花が咲くので他の花のように、その後にはタネをつけるのです。
ただ胡蝶蘭のタネは発芽と、親の遺伝情報を正確に伝える確率が低く、品種改良目的以外には一般に見られません。
1つのサヤの中には4〜5万粒のタネが入っていますが、自然界で発芽するのはその中から1粒あるかないかです。
胡蝶蘭はこんなにも貴重なお花なのです。
受粉から青いサヤになるまで1ヶ月。
その後、熟すまで半年かかります。
さらにタネをまいてから、花の形・大きさ・色合い・並び方・日保ちのよしあしを識別できるまで3〜4年。
「これはいい品種だ!よし、増やそう!」
そう決めてから次の世代が出荷できるまでさらに約3年。
なんと新しい品種が誕生するまで7〜8年もかかっているのです!